トランプ大統領がSuperintelligenceを言い出した真意を考えてみる
先日、米国のトランプ大統領が、連邦政府の公式文書では「人工知能(AI)」ではなく「スーパーインテリジェンス(SI)」という用語を使うよう定めた大統領令を出しました。 これだけなら、「なんだ、いきなりどうした?」という気分だったのですが、以下の発言もあったので話が変わってきました。

今後AIと言う者は敵と見なす、という発言です。あまりにも極端すぎます。 ただの「やばい人」で片付けてもよかったのですが、何か考えがあるのではと思わずにはいられず、少し調べて考えてみました。
まず、Superintelligenceとは何なのでしょうか。トランプ大統領が作った言葉なのでしょうか。System Integratorと同じ略称なのも嫌だなと思いながら調べると、元からある言葉でした。
日本語では「超知能」と訳され、簡単に言えば人類を超越した知能を持つ存在を指します。超知能はSFで聞き覚えがあるので「あー」と思いつつ、定義を知ると違和感が残ります。
さらに調べると、AIの先にあるのは本来AGI(汎用人工知能)で、人間が可能な知的作業をこなせるものを指すようです。そして、その先に超知能がある、という順序のようです。
たしかに、今のAIは一部の分野では人間を超えるレベルの知的作業が可能になってきています。
しかし、大多数の分野ではまだまだですし、研究者の間でも、AGIにはまだ到達していないという見方が主流のようです。
ところが、今回の大統領令は「Super Intelligence」を、今のAIを指す言葉として定義しています。今の状態のまま、名前だけをSIに変えるわけです。
まだAGIにも到達していない段階で、本来とはまったく違う意味でSIという言葉を使い始めたことになります。今回の大統領令がいかに突拍子もないかが分かります。
しかし、発言のおかしさ自体は瑣末です。なぜ今、こんなことを言い出したのかが本題です。
昨今のAI情勢で今回の発言と関係がありそうなのは、Anthropic や OpenAI がAI開発の減速を呼びかけ、いくつかの企業がそれに賛同しているというニュースです。
これに対してトランプ大統領は否定的な意見を述べています。つまり、AI開発推進派とAI開発減速派という構図があるわけです。
また、トランプ大統領は共和党ですから、民主党という対立軸も存在します。
つまり、もともとトランプ大統領には敵が多くいて、その敵はこんな阿呆な大統領令に従うわけがありません。
その事実を踏まえると、トランプ大統領の発言は意味が変わってきます。
大統領令は行政機関が「AI」という語を使うことすら認めないとしており、そこに「AIを使う者は敵」という発言が重なると、
もともと敵だった人は敵のままですが、どちらでもない中間層の立場が許されなくなりました。
トランプ大統領に従って「SI」と言うか、対立することになる「AI」と言うか。言葉一つで強力な踏み絵が作られたのです。
言葉一つで自分の敵を見分ける術を作ってしまう戦略性には、恐ろしさを感じます。
中国の故事に「鹿を指して馬となす」というものがあります。
秦の丞相・趙高が二世皇帝に鹿を馬だと称して献上し、皇帝が「これは鹿では?」と問うたのに対し、正直に鹿と答えた臣下を後に処罰した、臣下を試す話です。
今回と同じ構図です。
トランプ大統領が本当に超知能を普及させたいだけなのかもしれませんが、それでも結果として、従うか敵になるかの状況を生み出しており、恐ろしいほどの才能があると思わずにはいられません。
真意がどこにあるのかは分かりません。ただ、敵に回したくないなって思いました。でも、SIとも言いたくない。